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山頂や見晴らしのよいピークにある三角点。
これってなんのためにあるんだろう?・・・と思う人もあるはず。
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三角点とは、三角測量を行う時に地表に埋定された基準点のことを三角点といいます。
経度・緯度の基準になるのが「三角点標石」で、高さの基準になるのが「水準点標石」だということをまず覚えておきましょう! |
1.三角測量とは? |
三角測量とは、三角形の一辺の距離と二角の角度を知ることにより、他の二辺の距離を計算で求める方法をいいます。
その三角測量を実施したとき、地表に埋定された基準点のことを三角点といっています。
国土地理院発行の地図(2万5千分の1、5万分の1、20万分の1など)に△の記号で表示されているのが三角点で、一等から四等までの4種類があり、重要さや基本的性質から区別されています。
現在の国土地理院発行の地図は、明治年間に陸軍参謀本部陸地測量部の測量により完成された5万分の一図を引き継いで、全国を単一の基線から測量すると末端での誤差が大きくなるので、14の基線を設置して角基線から三角網を拡大してゆき、隣接する境界で誤差の少ないようにしました。
また一等三角測量を行う際は、はじめ本点(約45K間隔)測量を実施して大体の間隔を定め、ついで一等の補点(本点を含めて約25K間隔)の測量をして一等三角点網を完成させ、次に一等三角点を含めて約8K間隔に二等三角点を設定し、以下二等三角点を含めて約4K間隔に三等三角点を設け、更に以上を含めて約2K間隔に四等三角点を設けて、各基点から地形を20mの等高線に描写して地形図を作製したのです。
以上のように、この一等〜四等までの三角点は、地殻変動その他を知る重要な点なので、一等18cm角、二等と三等は15cm角、四等は12cm角の御影石(花崗岩)若しくは硬質の岩石の標石を、その地点に埋設して、上面の中央に+が刻まれてあって、その中心が三角点の位置であり、高さになっています。
その三角点の上面に+の記号で彫られてる部分で、方位を見るそうです。
※三角点と刻まれている面が南を示すと以前書いておりましたが間違いです。訂正させていただきます。
みなさん、ご存知ですか?
一等三角点のすぐそばに「たいせつにしましょう三角点」(**省国土地理院)という標識が立ててあるのを・・・(↑の白山の写真参照/ない場合もあり)
万が一、三角点が破損していたりしたら近くの国土地理院の地方測量部に連絡してあげましょう!
◆中部地方測量部(管轄= 岐阜、愛知、三重、静岡)
連絡先:052−961−5638
◆関東地方測量部(管轄= 山梨、長野、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川)
連絡先:03−5213−2051
◆近畿地方測量部(管轄= 滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
連絡先:06−6941−4507 |
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2.全国の三角点の数 |
三角点には一等から四等までの4種類があります。
◆全国にある三角点の数<2003年3月末現在>
種類 |
点数 |
一辺 |
設置の間隔(面積) |
設置の間隔(距離) |
一等三角点 |
972点
(うち補点約650点) |
18p角 |
1500kuに1点
(補点は500kuに1点) |
45.0km間隔
(補点は25.0k) |
二等三角点 |
5,056点 |
15p角 |
55kuに1点 |
8.0km間隔 |
三等三角点 |
32,699点 |
15p角 |
8kuに1点 |
4.0km間隔 |
四等三角点 |
64,557点 |
12p角 |
2kuに1点 |
2.0km間隔 |
合計 |
103,284点 |
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<数字は国土地理院発表によるもの>
※この表の他に五等三角点なるものもありますが、全国的にも珍しくほとんどみかけることはないようです。
三角点の約半数は明治・大正時代に設置されており、一等三角点の約4割は標高500m以下の低地に設置されています。 また、一等三角点の重さは90kg(24貫)あって、明治・大正時代には人夫がその石を背負って山頂まで運んだそうです。

三角点の標石は、地上に出ている部分が約4分の1の高さで、地下には残り4分の3の柱石が埋まっています。一等の場合はさらに下方盤石がその下30センチに埋められてます。
また、三角点の最も多い府県は、当然面積の広い北海道です。 |
3.三角点の歴史 |
日本の近代測量の基本となった三角測量は、工部省測量司が明治 4年にイギリス人
マクヴインの指導のもとで、東京府下に13点の三角点を設置したことに始まります。
その後、明治15年には、この三角点の選点 100点が終了し、明治17年からは陸軍省参謀本部測量局(明治21年陸軍参謀本部陸地測量部)がこの測量を引き継ぎ、いよいよ全国的な三角測量が始まりました。参謀本部では、8年間のドイツ留学から帰朝した(明治15年)田坂虎之助が現在の測量作業規程に当たる「三角測量説約」を完成させ、本格的な一等三角測量に着手し、この時点から測量はフランス式からドイツ式に変更されました。
一等三角測量は大正2年にはひととおりの観測が終了し、一応の完成をしました。
その後、千島や、樺太、台湾といったいわゆる外地の測量が実施され、そのあとは地殻変動をとらえる目的も併せ持って、繰り返し測量が実施されて現在に至っています。
ただし、近年はGPSなどの測量技術が進歩し三角測量はほとんどされなくなっているそうです。 |
4.三角点の見分け方 |

1.現場で、三角点の側面に書いてある文字を読み取る。
これが一番簡単ですが、実際には歳月による風雨や損傷を受けて三角点の等級が読めないことがあります。
2.三角点の径を計る。
一等は18p角、二等と三等は15p角、四等は12p角なので、少なくとも一等と四等の判別をすることはできます。
3.各種地形図を用いる方法
この方法も一般的です。 |
5.山の標高はどこを基準にして計測しているの? |
標高を正確に計測するに当たっては、明治6年6月から12年12月まで東京湾霊岸島の験潮場における平均海面(潮の満ち引きを図って平均を出す)を0として、明治24年に東京三宅坂にある尾崎記念館の中に水準原点を設置して基準としています。
昔は海の中にものさしを立てて、それを時間ごとに見て、海面の高さを記録して求めていたそうです。
ですから富士山の高さは、東京湾の平均海面からということになります。
これにも一、ニ、三等および基準水準点があり、主に道路傍に設置してあります。
◆全国の水準点の数(2003年3月末現在)
基準 |
一等 |
二等 |
電子基準点 |
合計 |
80 |
15,350 |
4,569 |
1,200 |
21,199 |
<数字は国土地理院発表によるもの>
※海の高さは、地方によって多少ちがいがあり、日本海側と太平洋側では日本海側の平均海面ほうが20cmぐらい高くなっていますが、日本の基準としては東京湾の平均海面を統一して利用しています。ただし、沖縄、佐渡、大島などの離島では、それぞれの島の平均海面を基準にしています。 |
6.具体的に山の高さはどうやって計測するの? |
図のように三角形のひとつの距離と角度を知ることで、残りの距離や角度をもとめる測量を三角測量といいます。
富士山の近くにある、高さや位置がわかっている場所(このばあい三角点A)から、角度をはかって、高さをもとめています。ここで、基準にする三角点や水準点の高さは、東京湾平均海面をもとにした「日本水準原点」から測量されています。 |
7.点の記って? |
点の記とは、三角点設定の記録のこと。
一等三角点の記、二等三角点の記、三等三角点の記の三種類があります。
三角点標石埋定の年月日と人名、覘標(測量用やぐら)建設の年月日と人名、測量観測の年月日と人名、その三角点に至る道順、人夫賃、宿泊設備、飲料水等の必要事項を収録したもので、明治21年以来の記録は永久保存資料として国土地理院に保管されています。 |
8.おまけ |
明治年間に日本の山のほとんど(宗教登山で開山された山を除く)が陸地測量隊によって初登頂がなされています。そして、最後に残された山は、弘法大師がワラジ3000足を使っても登れなかったという「剱岳」。
その最後の山に日本山岳会の小島烏水(うすい)が初登頂をするというので、そこで山岳会より先に測量隊の旗を立てなければ陸地測量部の恥であるということから、剱岳登頂を命じられた柴崎測量官が未踏の山「剱岳」に挑戦をすることになりました。
しかし、いくどもの挫折を乗り越え、決死の覚悟でやっと剱岳に初登頂したら、そこにはすでに奈良朝時代の錫杖の頭と剣があったという。
日本の宗教登山の歴史を垣間見た遺物だった・・・・
新田次郎著:剱岳(点の記)より
※この小説を読んでからと読む前とでは、三角点に対する関心度が大きく変わりました。
みなさんもぜひ一度は読んでみてください。 |
参考資料:「一等三角点のすべて」 多摩雪雄編 発行所:新ハイキング社
および国土地理院発表による資料
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