登山日記
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唐松岳〜不帰ノ嶮〜鑓温泉〜猿倉 平成20年7月19日・20日

1日目(八方尾根〜唐松山荘)

まえがき・・・北アルプスの唐松岳や白馬岳に登ったことのある人なら、この二つの頂きをつないでいる不帰ノ嶮(かえらずのけん)を一度は歩いてみたいと思うだろう・・・

ヒメシジミ【写真】ヒメシジミ?

八方尾根は、夏はハイキング、冬はスキーで賑わう観光地だ。
梅雨明けの連休初日で混雑が予想されたが、お花畑とスリルを楽しむために八方尾根から唐松岳に登り、その先の不帰ノ嶮(かえらずのけん)を歩いて白馬岳までつないでみようと思う。

ゴンドラアダムに乗って、黒菱平でリフトに乗り換える際に、きれいなルリ色のヒメシジミ(ミヤマシジミ?かも)を見かけた。
翅(はね)の美しさにみとれ、しばし足を止める。



 【写真】八方池山荘からスタート

リフトを下りると目の前に村営八方池山荘が建っている。
トイレや売店もある。
ここからは、直登コースではなく、湿地帯を通っていく自然研究路を歩くほうがたくさんのお花たちに出合う。
唐松岳から大きく派生しているこの八方尾根は、動植物の宝庫だ。
尾根の大部分は蛇紋岩からできていて、尾根を歩いていると紙を重ねたように見える葉片状の岩石や塊状の岩石がゴロゴロころがっている。
この蛇紋岩は主にかんらん石や輝石という鉱物からできていて、粘土鉱物に変わりやすいため、植生に大きく影響をあたえるといわれている。



 
自然研究路で出合ったお花たち(他にもたくさんあり)
ミヤマアズマギク ハクサンタイゲキ ミヤマウツボグサ イブキジャコウソウ
他にもトリアシショウマ、シモツケソウ、イワシモツケ、オニアザミ、ハッポウアザミ、ニッコウキスゲ、タカナエナデシコ、ヨツバシオガマ、タカネイブキボウフウ、ベニバナイチゴなどや低木のミヤマナラなど覚えきれないほど。



第2ケルンへ上がっていく湿地帯には見事なワタスゲの群落が広がる。

また湿地によくみられるヌマガヤのほか、キンコウカ、チングルマ、ユキワリソウなどがまとまって咲いているのも観察できる。


八方池【写真】八方池

八方池に着くと、白馬三山のガスが切れかけ、雄大な景色を水面に映し出そうとしていた。

低木のハイマツが一面に広がり、砂礫の中にタカネバラ、イワギキョウ、クモマミミナグサ、ミヤマムラサキ(蛇紋岩地に生える)などが見られる。



【写真】鹿島槍と五竜岳

双耳峰の鹿島槍と男性的な五竜岳が現れる。
ニッコウキスゲのオレンジが映えて絵画のようだ。


八方池から上部に歩んでいくと、『下ノ樺・上ノ樺』と呼ばれるダケカンバ林が突然現れる。
リフトを下りてからずっと高木性の樹木がなかったのでびっくりする。
この樺林のある地層だけが蛇紋岩ではなく、堆積岩からできているので、植生がガラリと変わるのだ。
自然っておもしろい!




下ノ樺・上ノ樺林の下層に咲いているお花たち
樺林のユキワリソウ 樺林のシラネアオイ


【写真】白馬三山

上ノ樺を抜け出し、稜線に再び立つと白馬三山の絶景が広がる。








【写真】丸山あたりからの不帰ノ嶮(帰らずのケン)




明日歩く、不帰ノ嶮(帰らずのケン)の稜線が広がる。
本来ならば天狗の大下りを下っていく南下コースが、クサリ場が連続する核心部の『U峰・北峰』が登りになるので順道といわれている。


 唐松山荘までに見かけたお花たち(その他クロユリ、ミヤマダイコウソウ、シナノキンバイ、ハクサンイチゲなど)
イワギキョウ アオノツガザクラ タカネヤハズハハコ ミヤマクワガタ
 

【写真】唐松山荘

13時15分 工事中の唐松山荘に着く。
この時点で本館はもう満員で、北館に続々宿泊者が入ってくる。
北館は新しくて、山小屋としてはとても快適だ。
この日の夕食は、4回転ほどしているらしかった。

夕食前に、広場で飲む生ビールが格別おいしい!
なんせ鹿島槍、五竜岳、剱岳、立山が一望できるんだから。




2日目(不帰ノ嶮〜鑓温泉〜猿倉)
唐松岳【写真】唐松岳へ向かう

夜が明ける前に唐松山荘を出て、4時45分に唐松岳に立つ。






唐松岳【写真】唐松岳でご来光を待つ登山者

山頂は、ご来光を待つ登山者で賑わう。
生憎と今朝は東の空にガスがかかって、ご来光は望めない。



【写真】不帰ノ嶮へ向かう女性登山者

二人組の登山者が不帰ノ嶮(帰らずのケン)へ向かったので、間を空けずにその後に続く。

単独の時は、万が一のことを考え、周囲に人がいたほうがいい。

V峰は、一般の稜線歩きと変わらない。



V峰をこなしてU峰・南峰へ向かう。その頂きには手作り風の表示(右下)がある。
南峰でちょっと一休み。唐松岳を振り返るとたくさんの登山者が群がっているが、こちらへ歩いてくる後続者はまだなさそうだ。

 V峰からU峰へ向かう稜線

 U峰・南峰でくつろぐ先行者。天狗ノ頭と右奥に鑓ケ岳が見える

いよいよ核心部のU峰・北峰へ向かう。雨がぽつぽつしてきて嫌らしい。
「きょうは誕生日なんだから、無事に通過できますように!」と独り言を言う。
北峰の通過はクサリ場の連続。剱岳のカニの横ばいに似た横歩きのクサリ場もある。
最後になが〜いクサリを鞍部まで下りたら、最後のT峰へ。
やれやれ、これで核心部を無事通過できた。
雨が本格的に降ってきたので、この鞍部でレインコートを着る。
T峰はアルプスの稜線歩きと変わらない。
ただ天狗の大下りを登るときは、この標高差300mは一度下ったら誰だって登りたくないよなぁ・・・と正直思った。
だから『帰らずのけん』って名づけられたんだ、と納得する。

コマクサ【写真】花の女王・コマクサ

天狗の大下りを登りきった岩場で、雨にぬれたコマクサに出合う。

ほっとするね。。。(ニコッ)



【写真】雨の天狗山荘

8時15分 天狗山荘

山荘界隈にウルップソウの群落が見られる。
やや時期が遅いので、咲き終わりのものが多いが、まだ頑張って咲いているものもある。

天狗山荘でホットミルク、ココアを立て続けに注文し、冷えた体を温める。
1時間ほど、雨の様子を窺うが止みそうにない。
1日早く天気が崩れたようだ。
白馬三山→白馬大池→栂池自然園へのコースは中止にし、鑓温泉から下山することに決めた。
こういうときの決断は本当につらい。。。下山途中から晴れてきたら後悔するからね。

【写真】鑓温泉

9時15分に天狗山荘を出て、鑓温泉分岐から大出原を一気に下っていく。
岩場にお花たちが咲いていたが、目もくれずただひたすら下るだけになってしまった。
雨は『自然観察』がおろそかになり、足元だけを見て歩くので嫌いだ。

いくつかのクサリ場と梯子をこなして、鑓温泉についたのが、11時。

露天風呂に男性登山者が入浴中だった(うらやましい)。



【写真】鑓温泉

鑓温泉からは、鑓沢、杓子沢、三次郎沢に広がる雪渓を下ったり、横切ったりして日向のコルまで下りる。
雪渓は結構長いので、軽アイゼンをつける人がかなりいた。





【写真】下りの池塘周辺で見かけたお花たち





ピンクのショウキラン

ギンリョウソウと同じ腐生植物。
自ら光合成ができないので、他の栄養物に依存する生活史をもつ。



【写真】猿倉荘

14時30分 猿倉荘
鑓温泉からの長い下りも、やっと終着。

最終バス 15時30分に乗車して、八方まで自家用車を回収しにいく。

松本電鉄「猿倉」線時刻表


(談)

天気予報が大きくはずれ、2日目の雨にやられました!白馬三山〜白馬大池はおあずけになってしまいましたが、不帰ノ嶮を無事歩いてこれたことと予想以上のお花畑に大変満足できる山旅でした。

コース紹介マップ

<参考コースタイム>

◆行程時間:/1日目:3時間15分(休憩40分含む)
八方池山荘 八方池 丸山 唐松山荘
10時 11時 12時20分 13時15分
 
◆行程時間:/2日目:10時間(休憩1時間40分含む) 不帰ノ嶮(唐松岳→天狗山荘)まで3時間30分
唐松山荘 唐松岳 U峰南峰 U峰北峰 U峰とT峰のコル 天狗山荘 鑓温泉 双子岩 猿倉
4時30分 4時45分 5時20分 5時37分 6時 8時15分(1時間休) 10時55分 12時5分 14時30分

◆登山形式:周回

コース紹介マップ

<見所>
・高山植物と高山蝶、稜線上の野鳥
・唐松山荘からの展望(百名山がいくつ見えるかな)
・不帰ノ嶮(かえらずのけん)
・天狗の頭や天狗山荘周辺のコマクサ、ウルップソウ
・鑓温泉の露天風呂風景(結構熱くて入れないとか・・・)

<注意点>
・軽アイゼンは、装着する・しないにかかわらず持参すること


<アプローチ>
八方のゴンドラアダム乗り場は白馬駅から車で5分。
ゴンドラ周辺に駐車場がたくさんあります。(1日500円が多い)

猿倉から白馬駅へのバス時刻表は松本電鉄のサイトへ(八方まで900円)。
タクシーだと八方まで約3000円。
八方のバスターミナルから車の回収にあまり歩きたくない人は、八方バスターミナルに近い駐車場がお勧め!


<立ち寄り温泉>
八方温泉「第一郷の湯」

八方バスターミナルの向かい(南)
500円
シャンプー、石鹸あり


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