登山日記
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錫杖岳南峰(推定2,020m) 平成16年10月24日 晴れ
新穂高温泉から北を眺めると笠ガ岳の西に荒々しく聳える山がある。
それが錫杖岳である。
その前衛フェースでもある烏帽子岩は岩登りのルートとしてクライマーたちに四季を通じて愛されている。
その錫杖岳の本峰に登るには正式な登山道はなく、錫杖沢をそのまま遡上していくのだが、去る10月2日に下見をしておいたにもかかわらず、錫杖沢の支沢を間違えて南峰に登頂してしまった。
事前にガイドブックやホームページ、地図で概念を下調べしておいても、読み手の思い込みあるいは説明不足による勘違いがあり、紹介者も自分が歩いたコースしか説明していないので、それ以外のイレギュラーの出現にまでは触れていない。
したがって、このコースは2回歩いてみて、確信をもっていえる。
沢登りを専門にやっている人はともかく、一般登山者の「ビギナーには向かない」どころか「ベテランでも心得て登るべし」の山だ、ということ。
道中クライマー以外の登山者と会うことはまずないので、有事の場合を考え単独では入山しない、ということ。
錫杖沢の水量は季節あるいは天候次第で変化しているため、ホームページなどによる他人の報告を信じ込まないこと。

【写真】錫杖岳前衛フェース

槍見温泉から笠ガ岳登山道に入り、クリヤ谷を渡ると見事なブナ林に出る。
やがて、前方に巨大な岩壁が姿を現す。
それが錫杖岳前衛フェースの烏帽子岩だ。
先が天を突くように鋭く尖っているので、錫杖の名前の由来にもなったとか。

目を見張るほど素晴らしい錦繍の紅葉に包まれている。

拡大写真

【写真】錫杖沢出合

登山道の木に赤テープ、あるいは赤ヒモを結わいである地点から左の沢に下る道がある。
それが錫杖沢出合だ。
錫杖岳に登るにはこの沢を遡上するしか道はない

拡大写真


【写真】滝のような沢

錫杖沢の本沢を30分も登ったところに岩屋(クライマーが利用する大きな岩)が左手にあるとガイドブックにはあった。
しかし、岩屋(あとからチェックして判明した)などはなく、谷が標高1500mあたり(高度計によれば)で左右に大きく分かれていたので、ガイドブック(岐阜県の山【山と渓谷社】)に書いてあったとおりに左の谷にとりついた。
これが大きな間違いで右へいけばすぐその先に岩屋があったのだ。(この岩屋にはロープが引いてある。それだけが目印)
下の写真参照

【写真】沢を遡上する

本峰へ向かっているものと疑いもせず、ひたすらぬるぬる、つるつるの岩場を遡上していく。
ニ度ほど、ひゃ〜と胆をつぶした(~~;;;;A

今年は台風が多かったので例年より水嵩が多いのでは・・・と下山後クライマーの若者に訊ねたら、「この時季はこんなものですよ。むしろ雪解けの始まる夏よりも水量は安定しています」と軽くいなされてしまった。




標高を次第に上げていくと、槍ヶ岳〜キレット〜奥穂高〜ジャンダルム〜西穂高まで展望が広がり、山麓の紅葉が色を添えていたV(^o^)V

【写真】大笹原の薮こぎ

沢が終わると大笹の海原に出る。
笹をかき分け、引っ張って、またかき分けひたすら急傾斜を稜線まで笹と格闘しながら登っていく。
稜線に出たら、右へルートをとり、随所に結わいである赤ヒモたよりに山頂目指す。


【写真】南峰から錫杖岳本峰を見る

12時10分 錫杖岳南峰
(この時点では本峰に着いたと思っていた)

この南峰に着いた時、変だなあ〜と思った。
薮の中でプレートもないし、北方面に本峰と烏帽子岩にそっくりの岩峰が屹立しているではないか!

やれやれ、、、、、二の句が告げないとはこの事だ(~~;A
休む場所もないので、すぐに下山。



重要な補足【写真】これが岩屋

行きと同じコースをたどる。
沢下りの途中で、岩屋を発見!
最初の谷の左右に分かれていたちょうどY点の股にそれはあった!
左の写真が岩屋。
ロープが張ってなければ、それとまったくわからない。
若者が休憩していたので発見できたようなものだ

この岩屋からは沢を下っていくのはよして、下流に向かって左手につけられたクライマー用の登山道を利用して出合まで下りた。
沢で転落すると「死」に至るが、クライマー用の登山道なら転倒しても骨折か打撲・捻挫くらいですみそうだった。

<補足>
このクライマー用の登山道を登っていくと前衛フェースに出てしまい、本峰にはいけない。(10月2日の下見ではこのクライマー用の道で迷わされた。至るところに赤ヒモがあるので、それに従うと失敗する)


15時 錫杖沢出合
16時30分 登山口


(談)
これほど惑わされた山は今までにお目にかかったことがありません。
本峰に一度到達してしまえばどうってことはないのでしょうが、まだ登頂していない段階なので詳しいコース紹介は控えさせていただきます。
なにしろ登山道はないので沢を遡上しなければなりません。意外にも沢は下る時より登る時のほうが、岩場の手がかりが薄くて何度も足元が滑ったりしました。その際のヒェ〜と心臓が止まりそうになったことが今でも忘れられません。滑落する自分の姿をイメージングして身震いしてしまいました。
万が一のことも考え、私たちはザイル(リーダー持つ)とハーネスも携行していました(結局使用はしませんでしたが)。

紅葉に関しては本当に素晴らしく、2年前に見た涸沢の紅葉に匹敵する程の感動をもらいました。
登山者はほとんどなくクライマーぐらいしか立寄りませんから、紅葉の撮影だけなら絶好の穴場です。

錫杖岳本峰は、また来年までお預けです。引っぱる山だなぁ〜(笑)
ちなみに行程時間は9時間で、ほとんど長休憩はとらなかったので実質8時間は歩きっぱなしでした。

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