登山日記
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夜叉ケ池(1,099m)&三周ヶ岳(1,292m) 平成15年10月25日 快晴

まえがき・・・三周ケ岳は、昨年の同時期に夜叉ケ池まで登ったところで突然のアラレに見舞われ、急激な気温低下に恐れおののき撤退した山である。また、夜叉ケ池に生息しているヤシャゲンゴロウに一度はお目にかかってこようかな・・・という好奇心もあって、秋晴れのきょう思い立って一人で出かけてみることにした。

夜叉が池登山口【写真】標高780mの登山口

岐阜市の自宅を6時頃でてきて、303号線を坂内村まで走る。
川上集落を過ぎ、「夜叉ケ池まで10Km」の指導標を右折して池ノ又林道を走れば終点が夜叉ケ池登山口。
40台位の車が駐車できるが、到着が遅くなると長蛇の路駐となる。駐車場には水場とトイレ(少し離れている)あり。
8時スタート。

夜叉壁【写真】夜叉壁

登山口から一旦下って、沢に架けられた板橋を二度渡る。
次第にゆるやかな登りとなり、見事なブナ林やイタヤカエデの黄葉の中を気持ちよく歩いていく。
やがて左に大きな夜叉壁が見えてくる。
まるで、アルプスの2000m級の山にこれから登ろうとしているかのように威圧的でダイナミックな壁だ。
ロッククライマー垂涎の壁のようにみえるが、実際誰も登っていないということはロッククライミング向けの壁質ではないということかな?・・・・



幽玄の滝 昇竜の滝
【写真】2つの滝

登山口から50分ほどで最初の滝「幽玄の滝」に着く。夜叉姫が身を清めたといわれる滝だ。
この滝の存在は長い間分からなかったそうだが、登山道の開発で見つかったそうだ。

池ノ又本谷を渡って10分程で右手に「昇竜の滝」が見えてくる。

ここから先は、この登山道最大の難コースに入る。夜叉壁の左鞍部に出る急坂の岩に取り付くのだが、観光客まがいの登山客が多いとあって、ちゃんと固定ロープが取り付けられてある。



夜叉ケ池1 夜叉ケ池2

【写真】ヤシャゲンゴロウが生息する夜叉ケ池


草つきの斜面を登りきったところが県境(岐阜と福井)の稜線上。
この稜線は分水嶺にもなっている。
いきなり三周ケ岳には向かわず、一旦夜叉ケ池に下りてみる。
9時10分。
まだ3人しかいない。静かなものだ。
しばらくザックに体を預けて昼寝をしていたら、気持ちよくなってきて寝てしまった(^-^;A
辺りからざわめきが聞こえてきたので、起きたらすっごい人!知らぬ間に・・・
福井県のパトロール隊の人も3人やってきた。

そうだ!きょうはヤシャゲンゴロウを見つけにきたんだった!
池の水は透明度が高く、よく中まで見とおせる。覗いてじっと目を凝らしていると「なんだかゴキブリみたいに黒いものが一匹泳いでいる」「でも、小さい!」「泳ぎは達者だ〜!」「なに、なに、これは??」
「ヤシャゲンゴロウですよ」とパトロール隊の人に教えてもらう。
ふ〜〜ん、これが日本でここにしか生息していないヤシャゲンゴロウか〜〜。
ちなみに生息数を聞いてみると「正確にはわからないが、400〜500匹くらいではないか。まだヤシャゲンゴロウの生態については、よくわかっていない」らしい。10年前には1500匹いたというのだから、あきらかに夜叉ケ池にやってくる登山者の行いが減少の原因になっているのではないか!・・・ということでボランティアのパトロール隊の皆さん(40人位)が毎週交替で登山者にビラを配って保護を呼びかけているそうだ。

パトロール隊の方に聞いたら、池の周りで宴会やって、残り物の汁やビールを平気で地面に流したり、池で手を洗ったり、花摘みに団体でいくご婦人方が後を絶たないそうだ。池はすり鉢状になっているから雨が降ったら、その汚れ物は全部池に流れ込んでくるのは必至だ。
これでは、生態系に影響があるのもうなづける。

【ヤシャゲンゴロウ】

形態:15〜16ミリ
生息地の条件:清澄な池で、汚水が流入せず、低温であること
学術的意義:国内で夜叉ケ池にしか生息せず、隔離された地点での固有種として生物地理学的に貴重
えさ(幼虫期):ミジンコ、ボーフラ等
えさ(成虫期):モリアオガエルの幼生、イモリ、カエル等
産卵:5月末〜7月初めに枯れ木の窪み、水草の根元などに産み付ける。1匹のメスの年間産卵数は約23個。約9日で孵化。孵化より羽化まで23〜28日。
その他:飛んでいる姿は目撃されておらず、生息地の転移や拡大の可能性は低い。
※資料提供・・・夜叉ケ池パトロール隊のビラ



三周ガ岳へ【写真】三周ケ岳へ

ひととおり、ヤシャゲンゴロウの話を聞いて、腰を上げる。
10時5分、スタート。
三周ヶ岳へは、夜叉ケ池からまた県境の稜線に上がる。
この時間だと、もう三周ケ岳から下りてくる登山者とすれ違う。

どうやら、笹ヤブの登山道のようだ(~~;
夜叉壁の上にでて、岩稜のやせ尾根を登っていく。



左端が三周ヶ岳【写真】左端のコブ山が三周ヶ岳

巻き道を過ぎて、笹を漕ぎ漕ぎ大きく登ったところが広々としたコブの頭
周りがよく見渡せる。
三周ヶ岳へは行かずにここで満足して下りてくる人も多い。

コブの頭から一旦下って、また笹ヤブを両手で漕ぎ漕ぎ(背丈以上もある)、見えない足元を足探りしながら進んでいく。

最後は、潅木の多い急坂を登りきると三周ヶ岳


三周ヶ岳【写真】三周ヶ岳

一等三角点のある三周ヶ岳からは、昨日冠雪した白山がよく見える。
御嶽山も健在だ。
武生の街も眼下に広々と広がっている。

山頂はちょうど昼時なので、食事をとる登山者でいっぱい。
ここでは写真だけ撮って、また夜叉ケ池に戻ることに・・・



夜叉へ戻る稜線【写真】夜叉へ続くきれいな稜線

行きと同じように笹ヤブの海原をかき分け、コブの頭目指して下っていく。
といっても、アップダウンが3回続くので、コースタイムは行きと変わらない。

時折、笹ヤブから顔がでたところで、辺りの風景を眺めてみる。

岐阜県側はすっぱり切れ落ちているので、足を踏みはずすとヘリのお世話になることになりそうだ。



銀座状態の夜叉が池【写真】銀座状態の夜叉ケ池

三周ケ岳から1時間ほどで夜叉ケ池へ戻ってくると、もう池の周囲は銀座状態。
人、人、人、人、人である。

それでも、お昼を食べたかったので、一旦また池まで下りる。
池から少し離れたところでお昼休憩。

パトロール隊の方の発表によると、今日の人出は400人位らしい。
明日も多分同じくらいだろう・・・と。
いやはや、これ等の人に「保護林内での行動」を啓蒙していくのも大変なご苦労があるだろう・・・と観光客まがいの団体さんを見て想像に難くない(~~;A

ほんとうにお疲れ様ですm(__)m

ブナの登山道【写真】ブナ林の美しい登山道

昨年のあられが降った時の強烈な寒さとは違い、きょうはうららかな一日o(^-^)o
昼寝をしていても気持ちがいい。

2時過ぎに、腰を上げてやっともどることに・・・

帰りは、ゆっくりブナ林の美しい黄葉を楽しみながら登山口まで下りた。




(談)
きょうはのんびり、秋山を堪能した一日でした。岐阜県側から夜叉ケ池に登ると、標高の割には夜叉壁が威圧感をもっているので、アルプスの錫丈岳にでも登るような感動があります。
お手軽な山としては推奨ナンバー1かも(^-^)

コース紹介マップ

夜叉ケ池

標高:1099m、池の周囲:230m、水深:深いところで7.7m、周囲はブナ(樹齢100年)を主体にした広葉樹林

<参考コースタイム>

7時50分/スタート
9時00分/夜叉ケ池
11時08分/三周ヶ岳
15時07分/登山口帰着

登山口(46分)幽玄の滝(10分)昇竜の滝(12分)夜叉ケ池(60分)三周ヶ岳(60分)夜叉ケ池(52分)登山口

・歩行時間:4時間、行程時間:7時間

◆登山形式:往復登山
コース紹介マップ

<見所>

  • 登山道のブナの黄葉が美しい。(ブナ、イタヤカエデ、コシアブラ、モミジ、ドウダンツツジ他いろいろ)
  • 主稜線に上がれば、360度パノラマの世界が広がる。


<注意点>

  • 夜叉への最後の登りは岩の急登なので注意が必要。
  • 三周ヶ岳へは藪コギになるので、てぬぐい・手袋は必携。
  • 三周ヶ岳の尾根道は岐阜県側が切れ落ちているので、足を踏み抜かないように!

<アプローチ>

岐阜市からは303号線を坂内村へ。川上集落を過ぎたらすぐ「夜叉ケ池まで10k」の指導標が立っているところが池ノ又林道の入口なので右折をする。あとは道なり。40台ほどの駐車場、トイレあり。


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